2016年面白かった本3選
あけましておめでとうございます。昨年は大して更新もせず内容もないブログにも関わらず、沢山のアクセス、コメント、スター?(よく分かってない制度)などありがとうございました。本当に自己満足でしかない文章ではありますが、読んでいただけてることに対してとても嬉しく思っています。
この記事が今年に入って初めての更新になりますが、年が明けた今更になって、2016年を振り返ってみよう企画第一弾になります。続くかは分かりませんが、とりあえずの第一弾です。第一弾では昨年私が読んで面白かった本、印象に残った本を紹介という名目で、1人では抑えきれなかった感想を書き記していこうと思います。
ここまで読んで、うわめっちゃ私に関係ないしなんの得にもならねえなんだこれふざけんなって思った方、
その通りです。
前置きから充分に伝わるとは思いますが、めちゃくちゃ個人的な趣味嗜好丸出し記事なので、興味の無い方には何も楽しくない記事になってしまうと思います。
もし読書がお好きな方で、今誰かの勧めた本が読みたい!とか読書の幅を広げたい!とか、または、暇すぎてとりあえず何かしてないとくたばりそうとか、私がどんな本を読んでるのか気になるとかいうとんでもなく物好きな方がいたら、是非読み進めて頂けたらと思います。
早速ですが、ここからは順にランキング形式で紹介していきます。
いや去年に出た本じゃないんか~~~いって思ったでしょう、ごめんなさい。二銭銅貨は、江戸川乱歩の処女作品で、大正15年に発表された近代文学作品です。読んだきっかけとしては、大学の授業で近代文学を勉強した時に出会い、その内容に惹かれて研究対象として取り上げました。*1
出だしの一部を引用すると
「あの泥坊が羨ましい」二人の間にこんな言葉が交される程、其頃は窮迫していた。
場末(ばすえ)の貧弱な下駄屋の二階の、ただ一間しかない六畳に、一閑張りの破れ机を二つ並べて、松村武とこの私とが、変な空想ばかり逞(たくま)しゅうして、ゴロゴロしていた頃のお話である。
普段近代文学を読まない方や、苦手意識がある人はこの時点で正直読みづらい…と思ったかもしれないので、ここでざっくり内容を説明します。
こんにちは、私と松村だよ。うちら狭い部屋でルームシェアしてるんだけど二人してめっちゃ貧乏でつらい。 とりまゴロゴロしてるよ。そういえば最近、そこらで大金が盗まれる事件あったらしいわ~知ってる?泥棒さんまさに一攫千金やん。羨ましいわ。
↓
~数日後~
私「そういえば、さっきそこに銅貨落ちてたから拾った」
松村「まじか。うわ!この銅貨いじってたら半分に割れたし、中になんか紙入ってんだけど」
私「まじかやばめ~」
松村「よく見たら、紙に謎の暗号書いてあるわキッショ…もしかしてこの暗号、あの事件と関係あるんじゃね?」
私「それほんま?」
松村「え、やばいまって。ちょっとまって。俺天才だわ凄いこと思いついた。やっぱりおれは天才だった」
俺「え、なになに?」
松村「俺の推理聞いてや。ペ~ラペラペラ(得意気)」
俺「お、お前すごいな…」
松村「だろ?!そんでな、ペラペラ~ラ(更に得意気)」
俺「やっぱりお前てんさ…とでも言うかアホすぎワロタ。これはな、ペラペラペ~ラペラペラ~ペラ~ペラペラペr☆△※ならrあlmg要するにざまあ。」
松村「(社会的に死亡)」
こんな感じです。読んだ人には分かると思い(願い)ますが、読んでない人には絶対分からないでしょう…でも、あくまでも私の話で全てを知ってもらうのは勿体ないと思うのです。
この作品の最も大きな魅力は、間違いなく最後のオチにあると私は思います。二銭銅貨はいわゆる探偵小説にあたり、私は普段あまり読まないジャンルですので断言は出来ませんが、少なくとも当時はかなり衝撃的なラストだったと思います。
今は様々な小説が書かれているので、普段から探偵小説を嗜んでいる方にはもしかしたら想像が出来てしまうかもしれませんが、それが分かっていても充分に楽しめると思います。
私の語彙力を失った半分ゴリラみたいな説明でもし少しでも興味を持った方がいたら是非読んでみてください。文庫でしたら『日本文学100年の名作 第1巻 夢見る部屋』 という本が、他の近代短編小説を同時に読むことが出来るのでオススメです。空き時間にお金をかけずサッと読みたい方は、みんな大好き青空文庫に最近載りましたので、是非読んでみてください。
日本文学100年の名作第1巻1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫)
- 作者: 池内紀,松田哲夫,川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/08/28
- メディア: 文庫
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青空文庫はこちら→江戸川乱歩 二銭銅貨
2位 朝井リョウ「何様」
2016年8月31日に新潮社から出ました。読んだきっかけとしては、単純に私が朝井リョウさんのファンなので手に取りました。度々ツイートにも出てくるとは思いますが、朝井リョウさんは一番早い説明としては「桐島、部活やめるってよ」の原作者です。
朝井さんは、キラキラした青春とか学生生活とかそういう世界観をとてもリアルに描いていて、とにかくどの本にしたって綺麗な文がいっぱい出てくるなあとずっと思っていました。どんな人がこの文を描いているんだろう、どんなに心の綺麗な人が描いてるんだろうと思っていました。でも実際に蓋を開けてみると、朝井リョウとはとんでもなく卑屈で、いい意味で性格がひん曲がった人でした。顔も爽やかでかっこいいのに(本人曰く妖怪馬顔猫背らしいが)*2、話し出すと見た目とは正反対に突拍子もない下ネタと自虐ネタを挟んできて、でもやっぱり姿勢は謙虚で、それと同時になんかちょっとイラッとするリア充感を醸し出してきて、というそのギャップにまんまとハマり、そのまま作品に留まらない正真正銘朝井さんの「ファン」になりました。
そんなこんなで、私は朝井さんの新刊が出る度に、本を買いサインを書いてもらうことは勿論、お話する目的も兼ねてサイン会に行かせていただいています。(作家さんによるとは思いますが、朝井さんのサイン会はまあまあな時間話せる)
折角なので、「何様」の時のサイン会も話もここに残しておこうと思います。
~ 9/10 三省堂神保町本店 ~
朝「こんにちは~」
私「こんにちは~(名前を書いた紙を見せる)*3」
朝「あ!本当にいつもいつも、いっっつも…ありがとうございます…(申し訳なさそう)」
私「いいえとんでもないです~」
朝「本当に何回目でしょうね、いつも来てくださってますよね」
私「そうですねぇ…あれ?なんか朝井さんいつもと髪型とか違いませんか?」
朝「あっ気づいちゃいました?!今日はですね…服とか髪型とか全部人に選んでやってもらったんです!!(ドヤ顔)」
私「あ、なるほど!いつもより…いいと思います」
朝「ですよね?やっぱりセンスある人は違うから…(卑屈モード)」
助手の方「やっぱり分かる方には分かるんですねえ」
朝「なかなかみなさん気づきませんよ!」
私「そうですか~素敵ですよとっても」
朝「ありがとうございます~(握手)」
私「また次回来ます、ありがとうございました」
今文字に起こして気づきましたが、今回はびっくりするくらい普通の、珍しくまともな会話をしました。そんなに頻繁にテレビへの露出があるということでもないのに、朝井さんのビジュアルの変化に気づいてしまった自分に若干のキモさを覚えていたのですが(ジャニヲタの性)、あとから朝井さんのツイートを見たところもっと強者がいてちょっと安心しました。
本日の会場となった三省堂書店神保町本店には『何様』『何者』のサイン本がありますので、お近くの方は是非。そして14日の紀伊國屋書店梅田店でのサイン会、整理券ゲットした方々何卒よろしくお願いいたします。ちなみに今日は2名の方に普通に「あ、携帯変えました?」と言われぶったまげました。
— 朝井リョウ (@asai__ryo) 2016年9月10日
サイン会の話はここまでとして、「何様」の内容に話を戻したいと思います。
「何様」は朝井さんが直木賞を受賞された、また昨年佐藤健さんや菅田将暉さんなどによって映画化された「何者」という作品のアナザーストーリーになっています。だから「何者」を読んだことのある方には勿論オススメですし、「何様」単体でも充分に読めます。
六篇の短編が収録されているのですが、その中でも私が好きなのは一番最初にある「水曜日の南階段はきれい」という作品です。
サイン会終了後、家まで我慢できず適当なカフェに入り、「何様」の表紙をドキドキしながら捲り、ゆっくりと読み始めたのですが、一ページ目を読んだ時点で私は気が付きます。
「え…?!これ読んだことあるんだけど……??!!!」
新刊なのに既に読んだことがある作品だったというのは初めてで、本当に焦りました。ついに好きという気持ちが募りすぎて、夢の中で朝井さんの発売前の原稿読んじゃった…?(知能が猿止まり)と自分を疑いました。
記憶だけでは解決出来ず、すぐに朝井さんの本を全て引っ張り出して心当たりのあるものをペラペラと確認してみました。その結果、朝井さんが参加された恋愛アンソロジーで既に読んだことのあった短編小説だということが分かり、ほっと一安心。
ちなみにこの本に収録されています
しかし安心したのも束の間、読み終わったあとに大変な事実に気が付きました。
この物語切なくてやりきれなくなるやつだから、二度と読まないようにしようと思ってた本だった
読み終わってから気づいても時はすでに遅し、切ない気持ちに包まれてボロボロに泣きました。1週間引きずりました。
朝井さんの学生ものが凄いのは、読者をその物語の舞台と同じ時期に巻き戻させるという点です。中学校だったら中学生の頃のように何も考えていないバカな時に戻れるし、高校なら高校生の頃のように、色々なものの板挟みになっていた時に、気持ちもそのまま戻れます。普段忘れていたことも全て、本当にいいことも悪いことも全てを思い出させてくれます。
「水曜日の南階段はきれい」は本当にその要素が沢山詰まっていて、実際にそんな体験をしていないとしても自分が物語の一員になれるんです。もう一度あの頃の自分に戻れるという感覚が凄くあります。
これも朝井さんの作品の中では、比較的にオチがある方だと思います。だからこれ以上内容に踏み込むようなことはしませんが、ただ私のように再読することが出来なくならないよう、覚悟をしてから読んで欲しいなと思います。色々な気持ちとか思い出が全て突き刺さってくるということを分かってから読んでほしいです。
「何様」のその他5篇もとても魅力的な話ではあるのですが、紹介しきれないのであとは是非本を実際に手に取って読んで頂けたらと思います。「何者」は単行本もありますが、昨年文庫化しています。「何様」は単行本です。
1位 天久聖一編「挫折を経て、猫は丸くなった」
1位はこちらの作品になりました。Twitterでも呟きましたが、本当に楽しく読ませて頂きました。
光浦靖子さんが勧めてた「挫折を経て、猫は丸くなった」も一ヶ月前?位に読んだんだけど本当に面白かった。単行本買うのって抵抗あるけど取り寄せまでして買った。読書芸人で紹介されると本が売れるってこういうことなんだな pic.twitter.com/4u0YQYS3f9
— う (@ui_krm) 2016年12月31日
この本は「書き出し小説」と呼ばれていて、小説の冒頭のみが書かれている本です。アメトークで光浦靖子さんが紹介しているのを見て、なぜかビビッとくるものがありこれは読もうと思いました。好きな作家の方以外の本はなかなか単行本で買うことはありませんが、これは手に入れなければと思い、即日取り寄せて貰いました。
中でも私が好きだった作品をいくつか載せます
オセロ部の誇りにかけて、不良から部屋の角だけは死守した。
音楽性の違いで解散した三人は、同じ工場に就職した。
(テーマ:「吉田」)
担任に好かれている吉田と、ただの吉田がいた。
(テーマ:歴史上の人物)
- 上の空で聞き返したら十人の話を聞いていたことになっていた。
- もう米のことなどどうでもいい平八郎だった。
(テーマ:大阪)
「肺に影がありまんねん」関西弁のお医者さんが言う私の病状は全て冗談に聞こえた
(テーマ:小学生)
- 理科のテストは『白く濁る』で乗り切った
- 彼は今日も良さげな棒を持っていた
めっちゃ面白くないですか?!なにこれ最早大喜利でしょう?!
他にも沢山の面白い作品がありましたが、みなさんの楽しみを奪ってしまうのでこの位にしておきます。
書き出し小説は短いからすぐに読み終わってしまいますが、一つ一つの文ですぐに脳内に映像が浮かんだり、二文目からはこの先の物語はどうなるのかという、自分の中のイマジネーションを働かせる感覚がとても気持ちいいです。また、本が苦手な人であったり、あまり長い小説が好きじゃない方にはもってこいなのではないかと思います。
どこのページから読み始めてもよし、ファンタジー風、コメディ風、ミステリー風、ラブストーリー風、どのように受け取ってもよし、本当に新しい形の文学だと思います。誰でも取っ付きやすく読みやすいという意味も込めての1位にしました。ぜひお手に取ってみてください。
こっちは同作家の一つ目の書き出し小説です。同じく面白いのでよかったらこちらも
だいぶ長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただけた方がいたらありがたいです。本当は五作品を紹介するつもりでしたが、長くなってしまったので3選とさせていただきました。
拙い文章ではありましたが、もし気になった本があったら是非手に取ってみてくださいね。2016年、沢山の作品を世に送りだしてくれた作家の方々ありがとうございました。今年も沢山の素敵な作品に出会えますように。